「音読で英語を話せるようになる効果はありません」
と言ったら、どのように思われますか?
ご存知かと思いますが、音読というトレーニング法は、
かなり前から日本では普及していています。
昔、同時通訳の神様と呼ばれた國弘正雄先生が、
「只管朗読」(しかんろうどく)という学習法を
提唱されたんですね。
それは、鎌倉時代の道元という僧侶の教えである
「只管打座」(しかんたざ:ひたすら座禅する)という
言葉をヒントにした造語なのですが、
「英文をひたすら音読する」というシンプルなものです。
そして、國弘先生の影響は大きく、未だに、先生の
「英会話・ぜったい・音読」シリーズは、
ロングセラーとして売れ続けています。
ネット上においても、
「話せるようになるためには音読を1日●時間」
みたいな論調が散見されたのですが、
今日は「実は音読で英語は話せるようにならない」
というテーマで説明をしたいと思います。
多分、音読を推奨されている方も、
「自分がそれで話せるようになった」
という経験をお持ちなんだと思います。
そんなわけで、良かれと思って、周囲に
「スピーキング力アップのために音読を」
と勧められているのでしょう。
でも、私も音読をやったことはありますが、
「話せるようになるか?」
という観点からは、残念ながら
効果を得ることはできませんでした。
ただ、音読トレーニングは、
英語を聞いたり読んだりする力を
アップさせる効果があるのは
間違いありません。
そんなわけで、
今日の記事を読んでいただくことで、
音読ではなぜスピーキング力が上がらないのか?
音読をやる意味は一体何なのか?
を理由を正しく理解していただきたいと思います。
音読トレーニングの効果を正しく理解することは、
目的に沿った学習を立てられることにつながり、
あなたの英語学習の効率化に必ず寄与しますので
最後まで是非読んでみてくださいね!
【本記事の解説動画です】
ひたすら音読で英語が話せる効果が得られるという誤解
「みるみる英語力がアップする音読パッケージトレーニング」本の影響
音読と言えば「この本」というほど有名なのが、
森沢洋介先生の
「みるみる英語力がアップする音読パッケージトレーニング」
ですね。
大きめの本屋に行けば、必ず置いてあります。
アマゾンでも高評価です。
表紙をご覧になっていただくと分かりますが、
—————-
・音読
・リピーティング
・シャドーイング
をパッケージ
楽に読み解ける英文を聴き
繰り返し口にすれば、
「英語体質」ができあがる!
—————-
と書いてあります。
本のタイトルにも「みるみる英語力アップ」
とあるので、これをやりこめば、
英語がペラペラになると勘違いするかもしれません。
(私は浅はかにも勘違いしました)
私も本を購入して、かなりやり込みました。
やり込んだ結果、本が裂けてしまいました(笑。
でもですね、スピーキング力アップの観点からは、
あまり効果は実感できなかったんです。
森沢先生曰く「音読では英語が話せる気配が出てこない」
そして、実は、音読パッケージの著者である森沢先生も
次のようにおっしゃっているんですね。
————-
他の方面(→読む力・聞く力)には大きな恩恵を与えてくれた
音読トレーニングですが、ただ会話力としては
実を結ぶことはなかったのです。
見返りの多い音読トレーニングでしたから、
英語を話す能力についても、少し遅れて効果が現れるのだろう
と思っていましたが、
いつまでたってもその気配はなく、
やがて3年程が過ぎていました。
————-
音読パッケージを推奨している森沢先生ですら、
音読トレーニングでは、
3年経っても話せる気配はないとおっしゃっています。
英会話初心者の方であれば、なおさら
話せるようにはならない、ということです。
音読では英語が話せるようになる効果がない理由
日本人が英語を話す際の脳の中のプロセス
では、なぜ音読では
話せるようになる効果が得られないのでしょうか。
ネイティブではない日本人が第二言語である英語を「話す」際、
脳の中でどういうプロセスを経るのか見てみましょう。
重要なポイントなのですが、
相手と話す際には、
「自分が言いたいこと」
を口から発するわけです。
言いたいことを頭に思い浮かべる作業を
①にあるように「概念化」と言います。
上記の例は、非常に簡単な例ですが、
「友人が通りを歩いているよ」
って話相手に言おうとした場合、
最初は①のプロセスが発生します。
そして、次に②のプロセス、
思い浮かべた概念を英文にするわけです。
上記の例は簡単なので、すぐに
”My friend is walking on the street.”
と構築できます。
そして最後、構築した英文を口から発する
これは③のプロセスの音声化です。
音読の何が問題なのかと言えば、
①の「自分が言いたいこと」を
口から発する練習していない点です。
「いやいや、音読でも多種多様な文章を
口から発する練習をするのだから、
スピーキング力アップにつながるはずだ」
とおっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。
しかしながら、実際の仕事の現場、
英会話レッスンでも良いのですが、
そこで話さなきゃいけない内容と
音読本の文章がどれだけマッチしているでしょうか。
音読では1つの文章を何度も何度も繰り返すわけでして、
話す内容のバリエーションを増やすには効率が悪いです。
の記事では、オバマ大統領の就任演説を
完全にシャドーイングできるようになった方が
結局、英語を話せずにフェードアウトしてしまったことを書きました。
音読より負荷の高いシャドーイングですら
スピーキング力は上げにくい、という事実があります。
音読では言わずもがな、なのです。
音読は「受容スキル」アップに効果的
では、音読は無駄なのかというと、
まったくそんなことはなくて、
森沢先生も英語を直接受け入れる体質ができると
おっしゃっています。
具体的には「受容スキル」がアップします。
「受容スキル」とは第二言語習得研究で使われる用語ですが、
簡単に言うと「音声知覚」と「意味理解」の力です。
具体的には、次の絵をご覧ください。
上の絵は、英語学習者である日本人が
英語を聞いた時の音声処理のプロセスです。
簡単に申し上げると、
①のように英語の音声を聞いたら、
②のとおり英文にします(音声知覚)。
そして次に、③のとおり頭の中で映像化、
すなわち、言われた英語の音声を意味として理解します。
(意味理解)
なお、上記の例は簡単なものなので、①から直で
映像(意味理解)まで行ってしまうかもしれません。
では、音読トレーニングでは、
一体、何のスキルが伸びるのか。
答えとしては、上の絵で言うと、
”He is walking on the street.”
という文章を読み上げて、その意味を理解する、
すなわち、
①と②を飛ばして、③のスキル(意味理解)を磨く
トレーニングを音読では行っているということになります。
只管朗読の効果は、ひたすら音読では得られない
只管朗読の効果、すなわち、
「意味理解」のスキルアップは、
単に「英語をひたすら音読」しただけでは
効率良く得ることができません。
お経のようにひたすら音読すれば
話せるようになのかどうか、
例えば、次の「お経」を1,000回音読したとしましょう。
仮に、これを「に~じ~せ~そん~じゅうさんまい・・・」と
1,000回音読したとしても、
そのお経の内容について
人に話せるようにはなりません。
なぜなら、
意味を理解せずに、単に読み上げているだけだから
です。
一方、次の文章を音読してみましょう。
——-
むかしむかし、あるところに、
おじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんは山へしばかりに、
おばあさんは川へせんたくに行きました。
おばあさんが川でせんたくをしていると、
ドンブラコ、ドンブラコと、大きな桃が流れてきました。
「おや、これは良いおみやげになるわ」
おばあさんは大きな桃をひろいあげて、
家に持ち帰りました。
そして、おじいさんとおばあさんが
桃を食べようと桃を切ってみると、
なんと中から元気の良い
男の赤ちゃんが飛び出してきました。
「これはきっと、神さまがくださったにちがいない」
子どものいなかった
おじいさんとおばあさんは、大喜びです。
桃から生まれた男の子を、
おじいさんとおばあさんは桃太郎と名付けました。
桃太郎はスクスク育って、やがて強い男の子になりました。
——-
この文章を読み上げると、頭の中で
おじいさんとおばあさんのやりとりや
桃太郎の生まれた様子、育った様子が
情景、映像、イメージとして浮かんできた
と思います。
この情景が思い浮かぶというのが大事で、
「意味を理解する」というのは、
内容が頭の中で映像化できるということです。
英語の文章について只管朗読、すなわち、
ひたすら音読を実施する際は、やりながら
「日本語訳」ではなく「意味」を瞬時に
イメージしていくことが大切です。
ですので、
ただ漫然と、英語の文字を目で追って、
それをひたすら読み上げても、
スキルアップにはつながらないのです。
だからこそ、音読する場合は、
スムーズに意味が思い浮かべられるよう
文構造、内容、文法事項、英単語を
理解できている教材が望ましく、
代表的なものとして、
中学校の教科書が推奨されているわけですね。
要は、英語をひたすら音読しながら、
情景、映像、イメージを思い浮かべるためには、
自分のレベルより若干低めの方が効果を得やすい
ということです。
お経をあげるように、無思考状態で1,000回
英語をひたすら音読しても、
只管朗読の効果は得ることができない
という事実にご留意くださいね!
そこを注意できれば、
音読の成果の果実を
手に入れることができますので(^^♪
音読トレーニングの見落とせない危険性(デメリット)
音読トレーニングには、致命的な弱点があります。
それは初心者だと特にそうなのですが、
・自己流で間違った発音のまま音読を繰り返してしまう
・発音やイントネーションが身につけにくい
点です。
これは英語初心者の方は特に留意すべき点です。
シャドーイングと違って、耳に英語の音声が入って来ず、
英語の文字を見て発声練習するので仕方ないところです。
ただ、この弱点をカバーする方法として、
オーバーラッピングという練習方法があります。
それは、英語の音声を流しながら、英文を目で追い、
その音声にかぶせるように音読する方法です。
音声とかぶせて練習するので、
さきほど申し上げたデメリットをカバーできます。
音読は、黙読と違って返り読みできないことから
意味理解のスキル(いわゆる読む力)をアップさせやすいのですが、
我流で音読し続けると、相手には通じない英語が身につく
可能性があることに注意しましょう。
英語を話せるためには、それに特化した学習法が必要
これは音読に限った話ではありませんが、
目的がふわふわしたトレーニングほど
効果の薄いものはありません。
そのトレーニングによって、
・何力(何のスキル)がアップするのか?
・また、なぜそう言えるのか?
を整理した上でないとダメだということです。
例えば、筋トレでは、鍛えている部位を意識してやるのと、
なんとなくやるのとでは効果は雲泥の差がありますよね。
英語学習も同じことが言えます。
「英語力がアップします」だけでは
整理が足りていないと言えます。
もやっとした状態で英語学習を進めても、
目的を達成することはできません。
大事なのは、目的から逆算して
「自分に必要な素材、学習方法を適切に選べるようになること」
そして、
大半の方がモチベーションが低下して挫折する英語学習を
「継続させること」
です。
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※なお、音読の正しい実践方法については、
「英語の音読は効果ない?初心者がやり方で意識するべき3つのポイントとは?」
の記事に詳しく書いております。